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星状神経節ブロック後の皮膚温の変化

交感神経は血管を閉める働きをしているので、交感神経ブロックすると血管が開きます。

そのため、交感神経の中継地点である星状神経節をブロックすると皮膚温が上昇します。

昨日、左の星状神経節ブロックをした患者さんが、30分の安静時間終了後に
「みてください。こんなに温かくなってます」
と手を出されました。

両手を握ってみると、右手は冷たくて、左手はすごく温かくなっています。
すぐに皮膚温を測ってみました。

右手掌:28.6℃
左手掌:33.5℃

その方は、5℃も差がありました。

星状神経節ブロックで皮膚温に左右差がでるのはあたりまえの反応で、たいてい2℃~3℃は上昇します。
元の皮膚温が低いと差が大きくなるのだと思います。

皮膚温の上昇はたいてい数時間以上続きます。
中には「1週間経っても、まだブロックした側が温かいです」という方もいます。

それから、交感神経は汗を出す働きをしているので、星状神経節ブロック後は汗がとまって、皮膚がサラサラになります。
さきほどの方も、左手は冷たく湿っていて、右手は温かくサラサラでした。

天気と痛み(痛みのメカニズム)

例年なら、さわやかな青空の広がるこの季節ですが、ここしばらく思いがけないほど寒い日が続いていますね。クリーニングしたセーターを出して、暖房までつけています。

寒くなったり、雨が降ったりすると、痛みは強くなることが多いようです。

気圧の変化や気温の変化と痛みの関係を調べた動物実験では、あきらかな因果関係は示されていませんが、経験的には、確かに寒さや気圧の変化、湿度は痛みを増強させると思います。

慢性の痛みの代表である「帯状疱疹後の神経痛」は、もうすぐ台風が接近する、これから雨が降る、というときには痛みが強くなります。
「『痛い痛い』と言っていたら晴れていたのに急に雨が降ってきて、まるで天気予報みたいです」という言葉もよく聞かれます。

この1週間くらいの異例の寒さの中、診察室をしながら感じることは、寒さや湿度は痛みの閾値に影響するのだろうということです。

治療を始めたばかりで強い痛みが続いている時は、天気がよくても悪くても痛みの強さはほとんど変わりません。
中等度の痛みになると、気温が下がると痛みが強くなり快晴になると痛みが軽くなります。
軽症の痛みになると、雨が降っても痛みが強くなることはありません。

治療の経過にもあてはまります。

最初は天候には影響されずに一日中痛みがあるけれど、治療をしていくうちに天気によって時々つらい日があるという状態になっていきます。
そして、痛みが軽くなっていくと雨が降っても寒くてもほとんど影響をうけなくなります。
痛みが完全になくならなくても、そこまでいけば治療は終わりです。

五月晴れが待ち遠しいです。

新患さん、いらっしゃ~い

最近は、ペインクリニックという言葉が浸透してきたせいか、予約の電話が次々にかかってきます。痛いからこそ、いろいろ捜してうちに電話をしてこられるの だと思いますが、私を始めクリニックとしてのキャパシティにも限界があるので、昨年の5月から、初診は1日3人までと制限をしてきました。

とは言っても、すぐに処置をする必要がある病気や痛みは無理してもすぐに受け入れるようにしています。
新鮮な帯状疱疹、新鮮な顔面神経麻痺、ぎっくり腰などです。

今日は午後だけの診療で、初診の予約はあらかじめ2名入っていましたが、発症から2週間以内の新鮮な帯状疱疹の方が3名来院されました。

帯状疱疹は、神経ブロックをできるだけ早く始めることで、その後の後遺症の程度が変わってきます。

帯状疱疹後の神経痛という後遺症ができあがってしまってから、どうしても痛みがとれないからといって他の病院から紹介されて来る患者さんが 多いのですが、インターネットの普及のおかげで、まだ帯状疱疹が発症して時間がたたないうちに、患者さん自らペインクリニックを捜して受診されるケースも少しずつ増えていま す。

それにしても、1日に3人も帯状疱疹の患者さんが見えたのは、記録かもしれません。帯状疱疹に好発時期はないとなっていますが、やはり春先は帯状疱疹になる方が多いように思います。

顔面神経麻痺-血流の途絶えた神経に酸素と栄養を-

最近、私のクリニックに顔面神経麻痺の患者さんの受診が増えています。

顔面神経麻痺は、中枢性と末梢性があって、中枢性は脳腫瘍や脳出血など脳に何か病変があっておこるもので、ペインクリニックでの治療対象になるのは、末梢性顔面神経麻痺です。

顔面神経麻痺は、中国伝統医学的には、その発症に風邪(ふうじゃ)や寒邪(かんじゃ)が関係していると言われています。つまり、寒いときや冷えたとき温度 差の大きな状態で発症しやすい病気です。最近は冷房が広く普及しているので夏でも発症しますが、やはり圧倒的に冬に多い病気です。

今までも私の所に顔面神経麻痺の患者さんはみえていましたが、発症から何ヶ月、何年と時間がたっている方が、後遺症がなんとかならないかといって受診される場合がほとんどでした。

最近はインターネットが普及しているおかげか、患者さんご自身が発症早期に治療法を調べてペインクリニックに来られるケースが増えています。

顔面神経麻痺の原因は、顔面神経に浮腫が起こり、骨性の顔面神経管の中で神経が締めつけられて血流が悪くなって顔面神経の働きが悪くなったために起こるも のです。つまり神経の循環障害が原因なので、細い血管まで強制的に開く働きのある星状神経節ブロックは理にかなった治療法です。

血流の途絶えた状態が長く続くと、そのうち浮腫がとれて血流が再開したとしても、神経そのものがだめになって元にもどらなくなってしまいます。
神経の働きが保たれているうちに、できるだけ早く血流を改善して、酸素や栄養を送り込むことが、後遺症を残さず顔面神経麻痺を治すためには大切です。

病気はなんでも、かかってすぐに治療ができれば治りがよいのはあたりまえですが、特に神経は時間との勝負です。

インターネットが普及したおかげで、以前よりは早い段階で星状神経節ブロックの治療を開始するケースが増えているので、よかったなぁとしみじみ思っているところです。

急性痛こそペインクリニックで

1週間くらい前に、私は仕事中に右の手首をひねったり力を入れたりした時に痛みを感じるようになりました。

料理をするとき包丁で人参が切れなくなり、重い鍋を持てなくなってしまいました。それ以外の日常の場面でも、車のハンドルを回すとき、小さな口紅を回す時にも痛みを感じるようになっていました。

右手の腱鞘炎のようです。注入時にかなり力がいる星状神経節ブロックを多数行っている私にとってはいわば職業病のようなものです。
低周波の治療をやってみましたが、まったく変化がありません。このままの状態だと仕事に差し支えると思って、すぐに星状神経節ブロックを受けに行ってきました。

星状神経節ブロックをしてもらった直後は特に変化も感じませんでした。治療の翌日の診療は痛みのでる角度をさけるようにして慎重に手を使ってなんとか仕 事をすることができました。そして星状神経節ブロックをうけて2日後にはまったく痛みがなく、右手を意識しないで仕事をすることができるようになりまし た。もうそれ以来痛みはでていません。

ペインクリニックの治療になじみのない方だったら、腱鞘炎くらいで星状神経節ブロックを受けようとは思われないかもしれませんね。
確かに、痛み止めをのんで、整形で電気治療を受けて、1ヶ月くらいかかれば治るかもしれません。

それでも治らないときに、何ヶ月もたってだんだん悪くなってから、他に治療法はないかしらと調べてペインクリニックにたどり着くということが多いのでは ないでしょうか。仕事に差し支えのない部位の痛みだったら、多少の痛みには目をつぶって、そのまま「仕方ない」と放置してしまうかもしれません。

急性期に神経ブロックで治療をすると、すぐに治ります。痛みが長引いてから治療を開始すると神経ブロックの回数も多く必要です。すぐに治る快適さを知っているので、私はすぐに星状神経節ブロックを受けに行きます。
「なかなかとれない痛みにはペインクリニックが有効」と思われていることが多いですが、実は、急性期の痛みこそ、神経ブロックの効果を感じられるものだと思います。

と書きながら、星状神経節ブロックの効果に一番驚いているのは私自身です。まさか一回で手首の痛みがなくなるとは思っていませんでした。2-3回は治療が必要かなと思っていましたから。
すぐに治ってよかったです・・・。右手に力が入れられなくなったらどうしよう、とほんとに心配していました。