「ペイン一般」カテゴリーアーカイブ

病院の実力「痛み治療」

最近、読売新聞を見ました、という患者さんからの問い合わせがあるので、どうしたんだろうと思っていました。

9月1日の読売新聞の17面の「くらし、健康」欄の『病院の実力』というコーナーで、ペインクリニックがとりあげられていたことがわかりました。

全国の医療機関の痛み治療の実績を調べたもので、2012年の新規初診患者数、頭痛の患者数、腰や背中の痛みの患者数、神経ブロックの件数が表になっています。

ちなみにわたしの西荻ペインクリニックは、2012年の実績で下記のとおりです。

新規初診患者数:581人、頭痛:150人、腰背中の痛み:200人

神経ブロック件数:17500件

神経ブロックの数は、全国で5番目です。28面の都内版でも「病院の実力」コーナーがあって、こちらには、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛と、三叉神経痛の数が表になっていました。

ちなみに、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛は100人、三叉神経痛は3人となっています。この表をみていると、その医療機関のペインクリニック診療の特徴がわかります。神経ブロックを中心に治療しているのか、薬物療法や心理療法で治療をしているのかなどなど。

この夏の日本ペインクリニック学会の調査で、各施設での星状神経節ブロックの年間件数のアンケート結果が発表されましたが、西荻ペインクリニックは、星状神経節ブロックの件数は、全国のトップタイでした。うちでの一年間の神経ブロックの17500件のうち、11000件くらいは、星状神経節ブロックです。

今年になってからは、継続的に研修にきている麻酔科のドクターが何人かいますが、昨年は、98%がわたしの実績です。一所懸命やってきたから、と誇りに思うと同時に、支えてくれている受付やナースのスタッフに感謝の気持ちがわいてきました。

関東甲信越地方会

麻酔科学会の関東甲信越地方会に出席してきました。

土曜日の診療を終えて、会場の京王プラザにかけつけました。

今回は、8月から、うちのスタッフとなった櫻井先生が、帯状疱疹後神経痛についての症例を発表してくれたので、特別の学会です。

全国規模の麻酔科学会の総会では、3日間かけていくつもの会場に分かれて、麻酔科のさまざまな分野のテーマが同時進行して開催されます。興味が違っていると、あいたいと思っている人とも、会期中まったく顔をあわせないこともあります。

その点、地方会は規模が小さいので、たくさんの仲間とあうことができます。

お互いの近況報告や、診療についての意見の交換などを、時間を気にせずすることができました。

天気と痛み(痛みのメカニズム)

例年なら、さわやかな青空の広がるこの季節ですが、ここしばらく思いがけないほど寒い日が続いていますね。クリーニングしたセーターを出して、暖房までつけています。

寒くなったり、雨が降ったりすると、痛みは強くなることが多いようです。

気圧の変化や気温の変化と痛みの関係を調べた動物実験では、あきらかな因果関係は示されていませんが、経験的には、確かに寒さや気圧の変化、湿度は痛みを増強させると思います。

慢性の痛みの代表である「帯状疱疹後の神経痛」は、もうすぐ台風が接近する、これから雨が降る、というときには痛みが強くなります。
「『痛い痛い』と言っていたら晴れていたのに急に雨が降ってきて、まるで天気予報みたいです」という言葉もよく聞かれます。

この1週間くらいの異例の寒さの中、診察室をしながら感じることは、寒さや湿度は痛みの閾値に影響するのだろうということです。

治療を始めたばかりで強い痛みが続いている時は、天気がよくても悪くても痛みの強さはほとんど変わりません。
中等度の痛みになると、気温が下がると痛みが強くなり快晴になると痛みが軽くなります。
軽症の痛みになると、雨が降っても痛みが強くなることはありません。

治療の経過にもあてはまります。

最初は天候には影響されずに一日中痛みがあるけれど、治療をしていくうちに天気によって時々つらい日があるという状態になっていきます。
そして、痛みが軽くなっていくと雨が降っても寒くてもほとんど影響をうけなくなります。
痛みが完全になくならなくても、そこまでいけば治療は終わりです。

五月晴れが待ち遠しいです。

新患さん、いらっしゃ~い

最近は、ペインクリニックという言葉が浸透してきたせいか、予約の電話が次々にかかってきます。痛いからこそ、いろいろ捜してうちに電話をしてこられるの だと思いますが、私を始めクリニックとしてのキャパシティにも限界があるので、昨年の5月から、初診は1日3人までと制限をしてきました。

とは言っても、すぐに処置をする必要がある病気や痛みは無理してもすぐに受け入れるようにしています。
新鮮な帯状疱疹、新鮮な顔面神経麻痺、ぎっくり腰などです。

今日は午後だけの診療で、初診の予約はあらかじめ2名入っていましたが、発症から2週間以内の新鮮な帯状疱疹の方が3名来院されました。

帯状疱疹は、神経ブロックをできるだけ早く始めることで、その後の後遺症の程度が変わってきます。

帯状疱疹後の神経痛という後遺症ができあがってしまってから、どうしても痛みがとれないからといって他の病院から紹介されて来る患者さんが 多いのですが、インターネットの普及のおかげで、まだ帯状疱疹が発症して時間がたたないうちに、患者さん自らペインクリニックを捜して受診されるケースも少しずつ増えていま す。

それにしても、1日に3人も帯状疱疹の患者さんが見えたのは、記録かもしれません。帯状疱疹に好発時期はないとなっていますが、やはり春先は帯状疱疹になる方が多いように思います。

顔面神経麻痺-血流の途絶えた神経に酸素と栄養を-

最近、私のクリニックに顔面神経麻痺の患者さんの受診が増えています。

顔面神経麻痺は、中枢性と末梢性があって、中枢性は脳腫瘍や脳出血など脳に何か病変があっておこるもので、ペインクリニックでの治療対象になるのは、末梢性顔面神経麻痺です。

顔面神経麻痺は、中国伝統医学的には、その発症に風邪(ふうじゃ)や寒邪(かんじゃ)が関係していると言われています。つまり、寒いときや冷えたとき温度 差の大きな状態で発症しやすい病気です。最近は冷房が広く普及しているので夏でも発症しますが、やはり圧倒的に冬に多い病気です。

今までも私の所に顔面神経麻痺の患者さんはみえていましたが、発症から何ヶ月、何年と時間がたっている方が、後遺症がなんとかならないかといって受診される場合がほとんどでした。

最近はインターネットが普及しているおかげか、患者さんご自身が発症早期に治療法を調べてペインクリニックに来られるケースが増えています。

顔面神経麻痺の原因は、顔面神経に浮腫が起こり、骨性の顔面神経管の中で神経が締めつけられて血流が悪くなって顔面神経の働きが悪くなったために起こるも のです。つまり神経の循環障害が原因なので、細い血管まで強制的に開く働きのある星状神経節ブロックは理にかなった治療法です。

血流の途絶えた状態が長く続くと、そのうち浮腫がとれて血流が再開したとしても、神経そのものがだめになって元にもどらなくなってしまいます。
神経の働きが保たれているうちに、できるだけ早く血流を改善して、酸素や栄養を送り込むことが、後遺症を残さず顔面神経麻痺を治すためには大切です。

病気はなんでも、かかってすぐに治療ができれば治りがよいのはあたりまえですが、特に神経は時間との勝負です。

インターネットが普及したおかげで、以前よりは早い段階で星状神経節ブロックの治療を開始するケースが増えているので、よかったなぁとしみじみ思っているところです。